網膜色素変性 (よくある目の病気 80)

よくある目の病気

第80回は網膜色素変性 (もうまく しきそへんせい)です。

網膜色素変性は、遺伝子に生まれつきの異常があり、夜や暗い場所で見えなくなる(夜盲)視野が狭くなる、などの症状が出る病気です。進行すると視力が低下し、全く見えなくなってしまうという難病(国の指定難病)です。ほとんどの人で両眼性に病気が起こります。進行のスピードは個人差が大きく、進行の早い人では40歳代で社会的失明に至りますが、ゆっくりな場合は60歳台を超えても視力が保たれる方もおられます。

網膜色素変性は、その名の通り網膜に異常が起こります。

眼球断面図1

AMD3 1

※日本眼科学会HPより転載

上の図は眼球全体図を示し、下の図は網膜周囲の構造を示しています。

網膜には光を感じる細胞として視細胞があり、視細胞には杆体(かんたい)細胞錐体(すいたい)細胞の2種類があります。

杆体細胞は主に周辺視野を担当しており、感度が高い細胞であるためわずかな光でも認識することができます。よって暗い場所でも反応することができる細胞です。

錐体細胞は主に網膜の中心部(黄斑)に存在しており、色の識別形の識別(視力)を担当しています。しかし明るい場所でないと機能を発揮することができません。

典型的な網膜色素変性では、まず杆体細胞が変性してしまうため、暗い場所で周辺部が見えなくなってしまいます。このため、夜盲になります。

進行した網膜色素変性や、特殊なタイプの網膜色素変性では、錐体細胞が変性してしまい、視力が障害されます。

厚生労働省の医療費助成制度の適応疾患です。都道府県から指定を受けた病院で治療を受ける際、助成が受けられます。平成24年の時点で、医療受給者証をお持ちの方は、27000人強おられます。

【症例】

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50歳男性。子供の頃から網膜色素変性で通院している。

弟さんと叔父さんがともに網膜色素変性と診断されている。

右眼の眼底写真を見ると、網膜の周辺部に多数の色素沈着が見られる。

網膜の血管も細くなり狭細化している。

矯正視力は0.4である。

SCN_0039

ゴールドマン視野検査の結果。

周辺視野が消失し、中心部の視野だけが残存している。

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光干渉断層計(OCT)画像を示す。

網膜は変性の結果、著明に薄くなっており、菲薄化している。

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同じ症例の左眼の眼底写真。

右眼と同様に網膜周辺部に多数の色素沈着を認める。

矯正視力は0.6である。

SCN_0038

左眼のゴールドマン視野検査結果。

周辺視野は消失し、中心視野10°のみ残存している。

【症状】

夜盲(=鳥目。暗いところで見えにくい)

視野狭窄(見える範囲が狭くなる)

視力障害

羞明(まぶしい)

【原因】

遺伝子に生まれつき異常(遺伝子変異)があり、網膜の変性を起こす病気を遺伝性網膜変性と呼びます。原因遺伝子は200種類以上知られており、遺伝性網膜変性の中で代表的な変性症に網膜色素変性があります。網膜色素変性という名前は網膜の周辺部に特徴的な色素沈着が見られることから大昔に臨床的に付けられた名前です。現在では遺伝子変異の研究が積み重なってきていることから、遺伝子変異網膜変性のパターンがどうつながるのか、が今後の研究課題となっています。

遺伝性網膜変性は眼科における神経変性疾患の最も代表的な病気であり、世界的にみても4000~5000人に1人の頻度で発症すると言われています。致死性ではないため、発症頻度は他の神経変性疾患に比べて高いと言えます。

遺伝形式も多様で、常染色体優性遺伝・常染色体劣性遺伝・伴性劣性遺伝などがあります。また、親からの遺伝ではなく、その人から始まる孤発例が約50%を占めるといわれています。

【治療】

現在のところ根本的な治療はありませんが、世界中に存在する難病のため、世界中の研究者が日々新しい治療法の確立に向けて努力しています。

治療の方向性としては2つの方向性が考えられます。

一つは遺伝子の異常が原因であることから、遺伝子の異常を修正する、もしくは、遺伝子異常によって失われた正常なタンパク質を補充するという発想です。ごく一部の遺伝性網膜変性では実際の患者さんにおいて成功しています。

もう一つは、神経の変性に関わる経路を研究し、変性のスピードを遅らせることによって重症化を防ぎ、失明を防ぐという発想です。

遺伝子治療再生医療人工網膜など、いろいろな立場の研究者が、さまざまな角度からこの難病の治療を目指して研究しています。

網膜色素変性硝子体混濁白内障を合併することが多く、白内障が進行した場合には白内障手術を行います。

最後に、羞明に対しては、遮光眼鏡という眩しさを感じる光の波長をカットする特殊な眼鏡があり、必要に応じて処方することがあります。遮光眼鏡については、いくつかの条件を満たすことで公的補助(補装具費支給制度)を受けて購入することが可能です。

(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)

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