第10回 緑内障の疫学調査に思う

本日は緑内障のお話です。

緑内障は我が国において、後天性失明原因の第1位であります。

緑内障の原因はいまだによく解明されておりませんが、網膜にある神経節細胞 (ganglion cell) がなぜか死んで少なくなってしまい(視神経が障害される)、その結果視野が欠けて狭くなってしまう、進行すると視力も低下してしまう、という恐ろしい病気です。

初期のうちは自覚症状が出ませんので、健康診断、人間ドック、コンタクトレンズ処方、その他眼科に受診された際に指摘されて判明することが多いです。進行すると元に戻す方法はありませんので、早期発見が大切で、進行しないように治療することになります。

緑内障の研究にはさまざまなレベルがありますが、疫学調査も大事な研究であります。

我が国の緑内障学会が主催した疫学研究には、岐阜県多治見市で行われた多治見スタディ(2000~01年)と、沖縄県島尻郡久米島町で行われた久米島スタディ(2005~06年)の2つがあります。

緑内障のひとつの分類として、昔から「開放隅角」緑内障「閉塞隅角」緑内障がありますが、

2つの疫学調査の結果における大きな違いは、「閉塞隅角」緑内障の有病率であります。

70~79歳 多治見スタディ 1・4% に対し久米島スタディ 4.1%

眼には隅角という場所があり、ここは眼の中の水(眼房水)が眼の静脈へと抜けていく場所なのですが、ここが狭い場合、「閉塞隅角」と呼びます。ここが広い場合は「開放隅角」となります。

図2

※日本眼科学会より引用

一般に隅角が狭い場合は、眼房水が静脈に抜けにくく、眼圧が上昇して視神経が傷むと考えやすいわけです。

しかし久米島スタディの結果では、もともと隅角が狭い閉塞隅角症が184眼あり、そのうち161眼には眼圧上昇が認められませんでした。つまり閉塞隅角症の人の88%は眼圧が高くないということがわかりました。

この2つの結果から考えられることを私なりに考察してみますと、

① 地域によって眼の形が違う、特に離島は眼が良い人が多い(近視の人が少ない)、つまりもともと隅角の狭い人が多いのではないか。

② 隅角が狭いからと言って、即眼圧上昇には結びつかない。やはり緑内障の進行因子には眼圧以外の因子がかなり関与している(血流説)。

今回のお話はかなり難しいお話になったかもしれませんが、

要は疫学研究はとても大事であり、さまざまな地域で行うことに意義があること、

そして、緑内障は将来、細分類される可能性が大きく、新しい検査方法の開発が望まれること、の2つを記しておきたいと思います。

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