水晶体性近視 (よくある目の病気 64)

「よくある目の病気」

第64回は、水晶体性近視 (すいしょうたいせい きんし) のお話です。

まず近視とは物体を見たときの映像が網膜より手前で結像し、網膜上には焦点が合っていない状態です。網膜より奥で結像すると、反対に遠視となります。

正視の状態 (網膜に焦点が合っている)

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近視 屈折性近視 (角膜・水晶体)

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近視 軸性近視 (眼軸長の延長)

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次に近視の強さを決める要素は大きく3つあります。

1つ目は角膜の屈折力

2つ目は水晶体の屈折力

3つ目は眼軸長

屈折力とは光を折り曲げる力のことを指し、屈折力が大きいほど、映像が網膜からさらに手前で結像しますので、より近視が強くなります(屈折性近視)。屈折力を構成しているのは角膜水晶体です。

眼軸長とは、眼球の奥行きを指し、眼球が奥に長ければ長いほど網膜よりさらに手前で結像するため、より近視が強くなります(軸性近視)。眼軸長が長い人は近視が強いということです。

さて、今回は水晶体性近視のお話ですが、これはいわゆる「中年の近視」と呼ばれる近視で、加齢により水晶体が硬くなり、屈折力が上がることにより近視が強くなるという現象です。

子供の頃や青年期に進行する近視は軸性近視で、眼軸長が延長することにより近視が強くなります。これはまたの機会にお話しますが、当院でも行っている「低濃度アトロピン点眼治療」の説明も参照してください。

【症例】

40歳男性。

最近、使用している眼鏡やコンタクトレンズが見えにくくなり、交換するがしばらく経つとまた眼鏡の度数が合わなくなるという訴え。

20160903 ref 1 20160903 al 右20160903 al 左

2016年9月3日時点で、

右眼の屈折値: -16.25 D

左眼の屈折値: -15.50 D

右眼の角膜曲率半径: 7.81mm

左眼の角膜曲率半径: 7.83mm

右眼の眼軸長: 26.58mm

左眼の眼軸長: 26.63mm

右眼の水晶体厚: 4.69mm

左眼の水晶体厚: 4.60mm 

であった。

この時点での矯正視力は右眼0.6、左眼0.7であり、すでに両眼ともに核白内障を生じていた。

20171204 ref (2) 20180130 al 右20180130 al 左

1年以上経過し、2017年12月4日時点で、

右眼の屈折値: -23.25 D

左眼の屈折値: -21.50 D

右眼の角膜曲率半径: 7.75mm

左眼の角膜曲率半径: 7.74mm

その約2ヶ月後、2018年1月30日時点で、

右眼の眼軸長: 26.64mm

左眼の眼軸長: 26.65mm

右眼の水晶体厚: 4.79mm

左眼の水晶体厚: 4.70mm

であった。矯正視力は右眼0.6、左眼0.8であった。

2016年9月の時点と2017年12月の時点を比較しますと、

屈折値が大幅に負に増加している(マイナスが大きくなると近視が強いことを示す)

大幅に近視化

角膜のカーブはほぼ同じ

眼軸長もほぼ同じ

水晶体の厚みが約0.1mm増加

とまとめることができます。

水晶体の厚みが0.1mmってたいしたことないと思われるかもしれませんが、

当院の10000眼研究の結果によりますと、正常眼では水晶体厚は1年で約0.024mm増加することが判明していますので、0.1mmの厚さの変化は、正常では4年間経過しないと進まない厚さの変化となります。

つまりこの方は1年間の間に、水晶体の厚みが急速に増したと言えます。水晶体に大きな変化が起こっている可能性が考えられます。

なお、水晶体の厚みが増したから、すぐ近視化するとは限りません。水晶体の硬化が生じ、屈折力が強くなっていると推測されます。

この患者さんは3ヵ月毎に来院していましたが、来るたびに近視が進行していました。そして頻繁に眼鏡やコンタクトレンズの度数を調整していました。

このように詳細なデータを取りますと、本症例における近視化の原因は、角膜眼軸長ではなく、水晶体にあることが強く推測されます。これを水晶体性近視と呼びます。

【症状】

視力が低下する

今まで使っていた眼鏡やコンタクトレンズでは見えにくい

【原因】

加齢に伴い水晶体が硬化することにより、屈折力が上がり近視化すると考えられます。中には白内障の進行が同時に起こり、水晶体の硬化と混濁が同時に進行する場合もあります。

【治療】

眼鏡コンタクトレンズの度数の調整することで、進行した近視の分を矯正します。

白内障が進行し、度数の調整(矯正)が困難な場合は、白内障手術を行い、水晶体を取り除いて人工レンズに置き換える必要があります。

(監修 京橋クリニック院長 佐々原学)

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